1)透析患者における血清および透析液のカリウム濃度と生存率
推薦コメント:この論文は、81,013人という大規模な維持血液透析患者データを用いて、血清および透析液中のカリウム濃度が生存率に及ぼす影響を詳細に解析した研究です。維持血液透析患者において血清カリウム濃度が死亡リスクと関連することは指摘されていますが、どの範囲の透析前血清カリウム濃度が最も望ましいのか、また透析液中カリウム濃度の最適値がどこにあるのかについては十分に解明されていません。本研究では、透析前血清カリウム濃度や透析液中カリウム濃度の設定と、患者の栄養状態や炎症指標、合併症、治療歴など多様な因子との関連が科学的に分析されており、日々のカリウム管理やリスク評価について改めて深く考えさせられる内容となっています。新たな研究を計画する方や現場の改善を目指す方はもちろん、既存の透析治療の「常識」の根拠を理論的に掘り下げたい医療従事者にも、ぜひ手に取って読んでいただきたい論文です。
2)オンラインHDFは低効率HDと比較して全身性炎症を軽減させる
推薦コメント:この論文では、血液透析治療における炎症反応に焦点を当て、オンライン血液透析濾過(HDF)が低フラックス血液透析(HD)と比較して、全身性炎症をどのように軽減するかを検討しています。維持血液透析患者における炎症は心血管疾患や死亡率に深く関与することが知られており、その管理方法としてHDFは注目されています。従来の研究でもHDFによる炎症マーカーの改善が報告されていますが、必ずしも一貫した結果が得られていないのが現状です。本研究はそのような背景のもと、炎症マーカーであるCRPやIL-6の推移を3年間にわたり追跡し、HDFの長期的効果をランダム化比較試験で評価している点に意義があります。透析治療に従事する医師や臨床工学技士にとって、必見の内容です。
©2023, Japanese Society for Technology of Blood purification