1)急性腎障害における腎代替療法開始のタイミング
Timing of Initiation of Renal-Replacement Therapy in Acute Kidney Injury
推薦コメント:急性腎障害は、敗血症性ショック患者で最も頻繁に見られる合併症であり、独立した死亡の危険因子です。腎代替療法は重度の急性腎障害(AKI)の標準治療ですが、開始の理想的な時期については課題となっています。 近年、腎代替療法を開始するための早期導入群と遅延導入群で比較した 2 つのランダム化比較試験で、相反する結果が報告されました。したがって、腎代替療法の早期開始に効果があるかどうかは確立されておらず、敗血症に伴うAKIで腎代替療法の開始を遅らせることに関連する予後についても報告はありません。 本論文は、臨床工学技士が急性期の血液浄化業務を実施するにあたり、腎代替療法の導入時期について説明している大変重要な論文と考えます。ぜひ熟読していただき、日々の業務に役立てていただけたらと思います。
2)持続緩徐式血液濾過器を用いたHMGB1の除去に関するin vitroでの評価
推薦コメント: 2016年に敗血症の定義(Sepsis3)が大きく改定され、敗血症は「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」と定義付けられました。臓器障害を進展させるメディエータの1つであるHMGB1は、炎症や遠隔臓器障害、細胞障害を制御する上では非常に重要です。 本論文では、持続緩徐式血液濾過器のうちサイトカイン吸着性能を持つPMMA膜とAN69ST膜に着目し、他の膜材質とも併せてin vitro実験で検討しています。実験の方法も詳しく説明されており、in vitro実験をしてみたい方にはとても参考になると思います。また、膜材質によって吸着特性が異なる点、分子量や等電点、ふるい係数、クリアランスといった概念を理解するうえでもとても良い論文です。 重症病態に関わるメディエータは、たくさん存在していますが、その中でも近年注目されているHMGB1と膜の特性を絡めて検討した興味深い論文で、血液浄化の役割がよくわかる論文と思います。
3)ギラン・バレー症候群における血漿交換の効率性:置換液の役割
Efficiency of plasma exchange in Guillain-Barr? syndrome: Role of replacement fluids
推薦コメント:単純血漿交換(PE)の置換液には、新鮮凍結血漿とアルブミン溶液が使用されています。両者には利点と欠点があるため、患者の病態に応じて使い分ける必要があります。 本論文では、ギラン・バレー症候群(GBS)に対し、PEを単独で行った場合の臨床効果と、各置換液を使用した場合での臨床効果および合併症について比較検討しています。GBSに対するPEの効果のみならず、置換液の違いによる臨床効果の差について調べられた数少ない貴重な論文です。
4)アフェレシス療法の除去率算出におけるヘマトクリット値補正
Adjustment by hematocrit level in calculation of removal rate in therapeutic apheresis
推薦コメント:従来のアフェレシス療法では、除去率を算出する場合、治療前後の溶質濃度のみで計算されていました。しかし、治療中に循環血漿量(PV)が変化した場合では、血漿中の除去対象物質の濃度が変化するため、正確性に欠けることが課題でした。 本論文では、各種アフェレシス療法におけるPVの変化量を定量的に評価しており、それに伴う溶質除去率(RR)の変化が検討されています。治療効率を的確に評価することは、有効な治療条件の選択やアフェレシス療法自体の評価の質を向上させることに繋がることが期待できます。また、各種アフェレシス施行時のPV変化量の評価だけでも有益な情報であり、施行中の安全管理の観点からもとても参考になる論文です。
©2023, Japanese Society for Technology of Blood purification