日本血液浄化技術学会

学術委員会が選ぶ必読論文020


1)腎臓領域における標準化されたアウトカムに関するハンドブック

THE SONG HANDBOOK

推薦コメント:腎代替療法を評価するときの腎症における標準評価項目 (Standardized Outcomes in Nephrology: SONG) に関するハンドブックです。 従来、臨床研究を行う際の主要なアウトカムとしては、生存率など様々な指標が使われてきましたが、試験ごとに評価項目が異なっているといった問題がありました。本ハンドブックでは、患者と医療者の双方にとって意義のある評価が可能となるように、すべての臨床研究で評価すべきコア・アウトカム、研究の内容によって含めるべきアウトカム、考慮したいアウトカムを決定した背景、また、分類されたアウトカムが記載されています。HD患者のコア・アウトカムとしては、疲労、心血管疾患、バスキュラーアクセス、死亡率の4項目が挙げられています。 今後、臨床研究を行う予定の方には、ぜひ一読いただきたい文献です。


2)透析患者における疲労の発生と転帰

Correlates and Outcomes of Fatigue among Incident Dialysis Patients

推薦コメント:アメリカの透析患者および腹膜透析患者について、疲労/活力低下についてSF-36を用いて分析し、多施設で1年間追跡調査した研究です。 まず、透析導入時の疲労の予測因子を検討し、次に疲労の長期的な変化を検討し、最後に疲労と健康関連QOLおよび生存率の関係を検討しています。SF-36を使い、疲労とさまざまな因子の関係を丁寧に評価した論文です。


3)短い睡眠時間と長い睡眠時間と慢性腎臓病:メンデルランダム化試験

Short or Long Sleep Duration and CKD: A Mendelian Randomization Study

推薦コメント:睡眠行動、とくに睡眠時間は腎機能や心血管疾患のリスクと関連することが明らかになってきています。 この研究は、短時間および長時間睡眠と中時間睡眠を比較してCKD有病率の違いを明らかにしたもので、CKDリスクを軽減させるための患者指導に役立つ論文といえます。また、465,814名を対象とした集団ベースの前向きコホート研究であり、RCTが統計的に最強な研究デザインではあるものの、コストや厳格な患者管理問題がある中では、本研究で使用されているメンデルランダム化解析という手法も解析手法として興味深いと思います。


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