1)透析低血圧における血行動態パターンと心拍変動のスペクトル解析
Hemodynamic patterns and spectral analysis of heart rate variability during dialysis hypotension
推薦コメント:血液透析患者の高齢化や動脈硬化に伴い、透析低血圧の発生頻度が高くなっています。 治療中に、突然の徐脈を伴う血圧低下が発生することがあります。この現象は、Bezold-Jarisch reflexと呼ばれ、高度の除水による血流量の減少が、左心室のから打ちを生じ、迷走神経反射と同様な、血圧と脈拍の双方の低下をきたす反応です。 本論文では、透析低血圧の発生機序がBezold-Jarisch reflexによるものかを検討しています。血液透析患者の循環管理をする際に理解しておきたい内容を含む有用な論文と考えます。
2)生体インピーダンス分光法を用いた透析低血圧時の細胞内液シフトのモニタリング
推薦コメント:透析低血圧は除水に伴う循環血漿量の減少が原因で起こりますが、除水以外にも治療中の細胞内液シフトが循環血漿量の減少に影響することが報告されています。 本論文では、透析低血圧患者と安定透析患者を対象に、生体インピーダンス分光法を用いて、治療中の細胞内液への水分移動量に着目した検討が行われています。 水分移動量や血漿浸透圧を規定するナトリウム、カリウム、尿素、血糖などは治療条件でその動態が変わります。透析低血圧を抑制する透析量をコントロールした治療条件を考えるヒントが得られるかもしれません。
3)血液透析中の浸透圧と血圧の安定性
Osmolality and blood pressure stability during hemodialysis
推薦コメント:透析低血圧の発症には血液透析中の血漿浸透圧変化が関連することが報告され、透析処方の役割に新たな関心が持たれています。 本論文では、血液透析患者における浸透圧調節の病態生理、血液透析による血漿浸透圧変化と臨床転帰の関連、患者の症状を軽減し血漿浸透圧変化を最小限にする透析処方が検討されています。透析低血圧の予防に対し血漿浸透圧の治療前値や治療中の変化量をコントロールすることの重要性が理解できると思います。 血漿浸透圧の役割を考慮した安全で効果的な透析処方を考える上でとても参考になる論文です。
4)細胞外水分比が低く心房室サイズが小さい血液透析患者は透析中の血圧低下のリスクが高い
推薦コメント:多周波数生体インピーダンス (MFBIA) 法による細胞外水分量 (ECW) および体水分量 (TBW) の測定はECW過剰を推定するために有用ですが、水分量を過大評価すると、透析中の低血圧が発生するリスクがあります。 本論文では26名の患者にMFBIA法によるECWおよびTBWを測定し、透析中の収縮期血圧 (SBP) と核磁気共鳴画像法 (MRI) による心房室サイズとの関連性について調べています。 不適切なドライウエイト設定を避けることの重要性が示されている論文であり、透析スタッフにぜひ読んでいただきたい論文です。
5)生体インピーダンス解析による若年者と高齢者の血液透析患者における水分と栄養状態の比較
推薦コメント:高齢透析患者の体液管理において、体液過剰状態にも関わらず除水管理に困惑する経験はないでしょうか。 本論文では65歳を境に若年層と高齢者に分けて、血清クレアチニン、アルブミンなどの血液検査値、握力などの人体測定値、細胞外水分/全身水分などのBIA法による各測定値を評価しています。BIA法は測定方法・各測定項目の原理について記述があり、測定結果については日常の管理で参考いただける内容であると思います。 体液過剰状態となる原因またはこれを予防するためには血液検査だけではなく日常管理としてBIA法による測定から透析患者の身体評価を継続して行うことの重要性を読み取ることができる論文です。
©2023, Japanese Society for Technology of Blood purification