1)COVID-19以降の在宅透析のための遠隔医療:米国腎臓学会COVID-19在宅透析小委員会からの展望。
推薦コメント:COVID-19のパンデミック以降、遠隔医療サービスへの関心と必要性が高まり、パンデミック以前の遠隔医療に対する障壁が急激に取り除かれています。 本論文では、透析分野における患者ケアを提供するための遠隔プラットフォームについて、課題や影響について論じられています。 米国では在宅血液透析や腹膜透析に対し、地理的な制限を取り除き、州の境界を越えたサービスの請求、既存および新規の両方へのケアの提供、SkypeやFaceTimeなどの非医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律に準拠していないプラットフォームの使用、メディケアに専門サービスの料金を請求する資格のあるすべての医療専門家に遠隔医療サービスを提供する資格が拡大など、透析を受けている患者にケアを提供するために遠隔医療プラットフォームの確立が実現されており、問題点なども明らかになりつつあります。 今後我々も遠隔医療サービスを進めていく際には、参考になる有用な情報が含まれていると思います。
2)COVID-19の時代の在宅透析:急速に変化する政策についての考察。
Home Dialysis in the Time of COVID-19: Reflections on Rapidly Changing Policies
推薦コメント:遠隔医療サービスへの関心と必要性が高まり、遠隔プラットフォームが確立されつつある現在において、今後新たなるパンデミックに対処するために現在導入している在宅血液透析や腹膜透析患者に対するケアの変更、新たに導入する患者に対する新しいトレーニング方法について論じられている論文です。 現在導入している患者に対する物理的な家庭訪問方法の変更、在宅における個人防護具の適切な使用法、物品配送方法などに対して、どのように取り組み、問題に対して解決していったかなど、実際の症例や経験を踏まえ報告されており、国家としてプラットフォームを確立した後の実際という内容になっています。 1)の論文と合わせて読むと、より深い洞察が可能になると思います。
3)血液透析センターにおけるSARS-CoV-2(COVID-19)パンデミックの予防、緩和、封じ込めのための提言。
推薦コメント:この論文は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック初期に、透析室におけるCOVID-19に対する感染対策の推奨事項を勧告としてまとめています。 「新型コロナウイルス感染症に対する透析施設での対応について(第5報)」によると我が国における透析患者の感染者数は2021年10月2日で268人まで増加していますが、密接した空間における集団での治療にもかかわらず、大規模な集団感染の発生が少ないとされています。 この要因として各透析施設で「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン」に準拠した厳格な感染対策が行われていることが挙げられています。 武漢市で初めてCOVID-19患者が確認されてから2年が経過しようとしており、ガイドラインを踏まえて我が国の各透析施設が実施している感染対策とパンデミック初期に勧告された感染対策の推奨事項を振り返ってみるのも興味深いと思います。
4)COVID-19による入院患者におけるAKI。
AKI in Hospitalized Patients with COVID-19
推薦コメント:COVID-19による入院患者における急性腎障害 (AKI)発症率に関する報告が世界各国で行われていますが、その発症率は1~42%と幅広いのが現状であり、回復後を含めた大規模な疫学調査は行われていませんでした。 この論文は、ニューヨーク市での発症率、重症度、危険因子、さらに回復後も含めた大規模な疫学調査を行っております。 AKIから回復した患者の状態に関する詳しい追跡調査結果は特筆すべきものであり、さらにAKI発症を予測する上で、血液検査のみならず尿検査の重要性をあらためて再考する契機となった論文と言えると思います。 ICUに従事する方、疫学調査に興味のある方に、この論文を推薦します。
©2023, Japanese Society for Technology of Blood purification