日本血液浄化技術学会

学術委員会が選ぶ必読論文015


1)定量的磁化率マッピングにより検出された透析患者の脳深部の静脈血酸素飽和度の低下。

Reduced deep regional cerebral venous oxygen saturation in hemodialysis patients using quantitative susceptibility mapping

推薦コメント: 定量的磁化率マッピング(quantitative susceptibility mapping:QSM)により透析患者の脳深部の静脈血酸素飽和度を、年齢と性別をマッチさせた健康成人を対照にして調べ、脳深部の静脈血酸素飽和度と臨床的なリスク因子の相関を検討した論文です。 脳深部の静脈血酸素飽和度が種々の臨床的なリスク因子と相関していることを示すことで、脳深部の静脈血酸素飽和度の有用性を明らかにしようと試みています。 また、脳深部の静脈血酸素飽和度をモニタする方法として、定量的磁化率マッピングの有用性も示されています。 内容や手法、いずれにおいても多くの有用な情報を含む論文と考えます。


2)透析患者の下肢筋肉組織の酸素加と相関する因子。

Factors associating with oxygenation of lower-limb muscle tissue in hemodialysis patients Miyazawa H, Ookawara S, Ito K, Yanai K, Ishii H, Kitano T, Shindo M, Ueda Y, Kaku Y, Hirai K, Hoshino T, Tabei K, Morishita Y.?Factors associating with oxygenation of lower-limb muscle tissue in hemodialysis patients.?World J Nephrol?2016;?5(6): 524-530 [PMID: 27872834 DOI: 10.5527/wjn.v5.i6.524]

推薦コメント:近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy:NIRS)を用いて、透析患者の下肢筋肉の局所酸素飽和度を相関する因子を検討し、多変量回帰分析により下肢筋肉の局所酸素飽和度と相関する因子を明らかにしています。 NIRSは通常、脳における局所血流の測定に用いられていた方法であり、筋肉の状態を知ることができることも知られていましたが、透析患者の筋肉の評価法としては使われていませんでした。 サルコペニアや末梢動脈疾患などのが起こりやすい透析患者の筋肉を評価するツールとしてNIRSが有用であることを示した重要な論文で、今後NIRSを使った筋肉の評価が広がっていくことも期待されます。


3)透析患者の脳虚血障害:高血圧と透析中の低血圧のどちらが危険?

Ischemic brain injury in hemodialysis patients: which is more dangerous, hypertension or intradialytic hypotension?

推薦コメント:透析患者では、認知障害が起こりやすく、また、うつの発生率も高いことが知れています。 古くは尿毒症による影響が言われていましたが、現在ではCKDの病態、透析のやり方など様々な因子が脳障害につながっていると考えられています。 本総説では、透析患者の脳障害の病態、また近年それを防ぐためにどのようなアプローチがとられているか、といった点について、血圧の影響などを含め、透析患者の脳虚血障害を理解するために必要な情報がまとめられています。 現在までに分かっていることをしっかりと理解した上で、透析患者の脳虚血障害を防ぐための治療を目指していきたいですね。


4)末期腎不全における脳血流調節

Cerebral blood flow regulation in end-stage kidney disease

推薦コメント:透析患者は、脳血管疾患および認知機能障害のリスクが高いことが知られています。 また血液透析は、血圧、浸透圧、酸塩基平衡の急激な変化を引き起こし、脳血管系に独特のストレスをもたらす治療です。 この総説では、慢性腎臓病および末期腎疾患における脳血流調節に関する最新情報と、透析中における脳への酸素加がどのようにして破綻するかについて、可能性を含めて解説されています。 透析患者の循環動態を理解するための基礎知識を得たり、透析と脳障害の関わりを研究する際に活用できたりする有用な情報を含む総説と考えます。


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