日本血液浄化技術学会

学術委員会が選ぶ必読論文007


1)透析継続中止とホスピス受療における終末期ケアの質に関する家族評価。

Association of Family Ratings of Quality of End-of-Life Care With Stopping Dialysis Treatment and Receipt of Hospice Services

推薦コメント:死亡前の透析中止と患者家族への終末期ケアに ついて調査した研究です。 終末期には、死亡する前に透析を中止した方が遺族の評価が高いという内容で、ホスピスサービスを同時に受けた患者家族は、終末期ケアが良好であると結論付けています。 少し前に本邦でも透析中止が話題になりましたが、6年間の調査で死亡した維持透析患者3369人のうち、937人が死亡前に透析中止という選択をしている点も日本の(というか私の?)感覚からは驚きでした。 受療の成否において、透析患者自身が意思決定過程に注意を向ける必要があるかもしれません。 血液浄化の技術的な内容ではありませんが、アメリカと文化の差を感じられると思います。


2)高齢者の透析意思決定へのアプローチの特徴:腎臓専門医の質的調査。

Characterizing Approaches to Dialysis Decision Making with Older Adults: A Qualitative Study of Nephrologists

推薦コメント:: 高齢化社会の中で、高齢者の透析導入患者が増えています。 通院介助の問題、合併症の問題等ある中で、維持透析施設として透析導入の意思決定がどのようになされたか気になるところです。 多くの高齢患者は、透析導入を自ら選ぶ選択肢と認識しておらず、また保存的治療(透析非導入)について十分な情報がえられていません。 その意思決定に腎臓専門医のアプローチ方法が大きく 関与しているという研究報告で、高齢者の透析導入患者への透析治療を行っていく中で透析施設としての寄り添い方を考える必要があります。


3)小児腎不全の長期的影響:オランダLERIC研究からの教訓。

Long-term consequences of renal insufficiency in children: lessons learned from the Dutch LERIC study

推薦コメント:慢性腎代替療法(RRT)を受けている小児の成人期 の見通しに関するデータはほとんどありません。 この記事は、15歳未満で1972年から1992年RRTを実施した患者(249症例)を対象に、2000年と2010年に実施されたオランダの包括的な長期追跡調査の結果をまとめたものです。 小児の腎臓移植までRRT施行期間によって、成人期の心血管疾患(CVD)、感染症、発癌のリスクについて述べられており、小児期にはできるだけ早い時期に移植を実施しRRT期間の短縮が、リスク軽減につながると述べられています。 また、小児期のRRT期間や、移植後の免疫調整剤などが、心理社会的な方面、日常生活への影響など考えさせられる論文です。


4)CA.R.PE.DI.E.M. (Cardio-Renal Pediatric Dialysis Emergency Machine): 乳児における持続的腎代替療法の進化。

CA.R.PE.DI.E.M. (Cardio?Renal Pediatric Dialysis Emergency Machine): evolution of continuous renal replacement therapies in infants. A personal journey

推薦コメント:小児腎機能障害に対して、腎代替療法を選択する場合、 成人に使用している血液浄化システムを小型化したもので実行されています。 本論文では、過去30年間の小児RRTの進化について説明し、腎代替療法の実施が臨床的および技術的課題である体重10kg未満の子供に焦点を当て、装置開発(CARPEDIEM project)を行いました。 開発された装置は、44 (L) × 43 (H) × 23 (W) cmで13 kgと小型化し、さらに使用するフィルタは中空糸内径を大きくして(500 μmや1100 μm)圧力上昇抑制可能な小型フィルタを設計しました。 この装置は、すでに国際学会(EDTA2019)の企業展示にて展示され注目を集めていました。


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